Mines
〜ダイヤモンド・ゴールド鉱山の現実と
「紛争ダイヤ」の存在〜

「この国でダイヤモンドなんて採れなければこんな悲劇はなかったかもしれない。
我々はリッチカントリー(豊かな国)だが、プアー(貧しい)なんだよ」

プロポーズ、記念日、式典、晩餐会etc...
様々なシーンで世界を煌びやかに彩るダイヤモンド。

この広い宇宙の中で地球という星が生まれ、
まるで呼吸をしているかのようにゆっくりと時間をかけて星という生命体の活動がおこなわれてきた。
そんな何億年、何十億年という途方もない時間の中でうまれた奇跡の石。
それがさらに時間をかけて地表に現れてきた。それがなぜアフリカという大地だったのだろう。

ここ中央アフリカ共和国はダイヤモンド産出国として世界トップ10に入る。
この国で採掘されるダイヤモンドは「Blood Diamonds(血のダイヤ)」と呼ばれ、内戦の原因と言われている。
長く続く内戦が中央アフリカ共和国の人々を苦しめている。
この国の内戦にはダイヤモンドが必ず絡む。
なぜこの国でダイヤモンドが内戦の原因となっているのか。

この国はキリスト教徒とイスラム教徒が共存してきた歴史がある。
それは争いの歴史でもある。
人々がダイヤモンドの価値を知り、
この土地でそれが採掘できることが分かったことからその利権を巡っての争いが始まったのだ。
それは国内だけで収まらず、周りのアフリカ諸国やヨーロッパの大国などの思惑に翻弄され続けてきた。
キリスト教とイスラム教の宗教戦争として。

そんな同国に存在する「奇跡の鉱山」バネベレキャンプ。(Banegbele camp)
ここではキリスト教徒とイスラム教徒が共存している。
さらにこのダイヤモンド鉱山で共に汗を流している。
現在、西部の地域では、ほぼキリスト教徒たちが鉱山を押さえているから、
イスラム教徒たちが鉱山で労働者として共に働いていることは「奇跡」である。

だけど…
奇跡なんてどこにもなかった。

そんなことを期待していた自身を恥ずかしく思えた。
汗を流す彼らは、ただただ美しかった。

ここにキリスト教徒もイスラム教徒もなかったのだ。
そもそも裸になって汗を流してる彼らを見て、
宗教の違いなんて見分けがつくはずもなかった。
クリスチャンだから十字架をぶら下げてる?
ムスリムだからターバンを巻いてる?
こうやって同じように裸になって懸命に働く彼らにそんなものはなかった。

同じ目的で、同じ夢を見て、同じ汗を流している彼らには必要なかった。
ファインダー越しの彼らの姿はただただ美しかった。
そんな労働者たちの姿は、壮大なアフリカの大地よりも、
自然が生み出した奇跡の塊であるダイヤモンドよりも美しかった。

Photograph by Hiroshi Aoki